自然な感染後のワクチン接種 する? しない? するならいつする?

 接種時期選定の参考 

 補足説明:臨床観察 

 

 案 内

 このページは「接種時期選定の参考」ページの補足説明を収めています。

 ここでは、臨床観察を紹介します。

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 下のグラフは、多くのコロナ患者やmRNAワクチン接種者を観察した結果得られたものです。

 

 

 一般的に、医師が「ごく少人数の患者」を観察する場合、偶然やバイアス(データの偏りによるゆがみ)の影響を強く受けます。

 しかし、「観察研究はRCT(ランダム化比較試験)と比べてバイアスのリスクが高くなるが質の良い観察研究ならばRCTと結論が変わらない」とも評価されています(「観察研究」田中優、川口正彦、2016)

 多くの患者をじっくりと時間をかけて診察すれば、質の良い観察結果を得られる可能性が高まります。

 約300名の診察と、数千人(おそらく5千人以上)のmRNAワクチン接種会場での問診(その中に、2回目接種者や3回目接種者がいて、前回接種後に何が起こったのかを確認します)を通じて上図のような変化があることに私は気付きました。

 

 出来事を列挙すると下のようになります。

 2020.01.15~2021.06.30:コロナ患者三百数十名の診察(平塚)
  COVID-19の症状を掌握
 2021.02.14:ファイザー製ワクチンの製造販売承認
 2021.02.17:医療従事者対象の接種開始(ファイザー)
 2021.04.12:高齢者等への接種開始(ファイザー)
 2021.05.21:武田/モデルナ製ワクチンの製造販売承認
 2021.06.01:「16歳以上」→「12歳以上」へ拡大
 2021.06.21:会社員等への職域接種開始(モデルナ)
 2021.07.01~2021.09.30:予防接種問診業務に従事
 (数千名~五千名以上?:1回目、2回目、3回目の接種)
  mRNAワクチンの副作用を掌握(コロナ症状と似ている)
 2021.10.01:横浜の発熱外来非常勤勤務の開始(週3日)
 2021.??.??:上記のグラフを作図して説明を開始

 

 ワクチン接種会場で印象に残ったもの:

 「1回目接種の後にコロナにかかったので2回目接種が遅れました」(これは多かったです)
 「1回目接種の後に帯状疱疹になったので2回目接種が遅れました」(コロナの次に多かったです)
 「1回目接種の後に、たまたま顔面神経麻痺になって、治療を受けていたので2回目接種が遅れました」
 「1回目接種の後に心筋炎で入院しました。すぐに治り退院しました。主治医が2回目接種をしてよいと言っていました」
 「1回目接種のあと、家族は38度を超える発熱がずっと続いています。今日は私だけが3週間後の2回目接種に来ました」
 「2回目接種を受けに来ました。体調良好です(全身の強い黄疸出現に気づいていない様子)」(接種不許可とし内科受診を指導。後で調べると、米国で接種後自己免疫性肝炎の報告あり)

 

 そして、横浜の発熱外来でこの図を用いるようになってから、何千人というコロナ患者を診ていますが、この図を修正しなければいけないような出来事にはまだ出会っていません。

 

 

 「世界をアップデートする方法(篠原信:しのはらまこと、2024.02.29、集英社インターナショナル)」より

 アリストテレスは「観察」という手法を確立した。自然界に存在するものを丹念に観察し、そこから新たな発見をし、知識を増やしていくという方法論をみんなに示した。それまでの人々は、意識的に自然を観察し、そこから何かを学びとるという姿勢を明確にもっていなかった。彼が意識化したのだ。
・・・・・・

 アリストテレスは現実を「観察」することを勧めた。現実をよく観察すれば、教会の僧侶たちがしゃべってきたことと矛盾する新事実が次々発見される恐れがある。中世西欧の世界では、聖書にはこの世のことすべてが書かれていると信じられていたのに、アリストテレスの「観察」を実践すれば、聖書にはない事実が見つかってしまう。その危険性があるから、アリストテレス哲学は長らく禁止されていた。しかし十字軍をきっかけに、アリストテレス哲学の流行を抑えきれなくなってしまった。

 

 

 この図にほぼ合致する疫学的研究結果が発表されました(Posted April 29, 2024.)。

 Effectiveness of the 2023-2024 Formulation of the Coronavirus Disease 2019 mRNA Vaccine against the JN.1 Variant

 Nabin K. Shrestha(Department of Infectious Diseases, Cleveland Clinic, Cleveland, Ohio, USA), Patrick C. Burke, View ORCID ProfileAmy S. Nowacki, Steven M. Gordon

 

クリーブランドの論文の更新版

ネットに惑わされずに
自分で読んだ方が良い

結論は…ワクチンの予防効果は有り
但し、感染で獲得した免疫より効果が弱く、有効期間も短いので、長期には既感染者より感染リスクが高くなる
この研究の限界は感染歴の誤分類があることhttps://t.co/K05kyP4jir

— 伊賀 治 (@osamu_iga) May 12, 2024

 

 

 まだ、ざっとしか見ていませんが、Discussion の最後の方には次のようにまとめています。

 

 Consistent with similar findings in many prior studies, a higher number of prior vaccine doses was associated with a higher risk of COVID-19. The exact reason for this finding is not clear. It is possible that this may be related to the fact that vaccine-induced immunity is weaker and less durable than natural immunity. So, although somewhat protective in the short term, vaccination may increase risk of future infection because the act of vaccination prevents the occurrence of a more immunogenic event. Thus, the short-term protection provided by a COVID-19 vaccine comes with a risk of increased susceptibility to COVID-19 in the future. This understanding suggests that a more nuanced approach to COVID-19 is necessary. Although some individuals are at high risk of complications from COVID-19, and may benefit from receiving a vaccine frequently, the wisdom of vaccinating everyone with a vaccine of low effectiveness every few months to prevent what is generally a mild or an asymptomatic infection in most healthy persons, needs to be questioned.

 多くの先行研究で得られた同様の知見と一致して、過去に接種したワクチンの回数が多いほど COVID-19 のリスクは高かった。この所見の正確な理由は明らかではない。ワクチンによって誘導される免疫は感染による自然な免疫よりも弱く、持続性も低いという事実が関係している可能性がある。つまり、短期的にはある程度予防効果があるが、ワクチン接種という行為がより免疫原性の高い事象の発生を防ぐため、将来の感染リスクを増加させる可能性がある。このように、COVID-19 ワクチンによる短期的な防御は、将来 COVID-19 に感染しやすくなるというリスクを伴うのである。このような理解から、COVID-19 に対する「より微妙なアプローチ」の必要性が示唆される。COVID-19 による合併症のリスクが高く、頻繁にワクチンを接種することで利益を得られる人もいるが、ほとんどの健康な人では一般に軽度か無症状の感染症であるものを予防するために、数ヵ月ごとに効果の低いワクチンを全員に接種するという感染対策は疑問視される必要がある。(deepL翻訳を改変)

 

 

 

 この図の、より詳しい意味(自然免疫、細胞性免疫、液性免疫に分けて変化を見た説明)は「補足説明8:2度目の感染」でおこなっています:▶ ▶ ▶

 

 参考:

 新型コロナワクチンについて(2021年8月5日現在)

 

 

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