S6◆ 血流量
= 血液量 ✕ 血管半径 2

 

 医者の不養生:一喜一憂しない血圧管理

 

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 S6◆ 血流量
  = 血液量 ✕ 血管半径 2

 

 血圧 P が消えて、ようやく役に立ちそうな数式が出てきました。

 

 

 

 

 では、必要な血流量を維持するためにおこる血液量や血管半径の調節の結果として、血圧が決まる過程を見ましょう。

 

 

 数式計算は、ここで終わりです 😮‍💨

 重要な数式が得られました。

 

 

 では、次の大事な図を再確認してください。

 

 

 ヒトの血液循環系は、心臓の働きで血液量を調整し、血管壁の緊張具合で血管の半径を調整しています。

 その調節を行っているのが自律神経系(交感神経や副交感神経など)や内分泌系(ホルモン)などです。

 そうした調節の結果、血圧が決まります。

 調節は常におこなわれており、血圧も刻々と変化しています。

 血圧を直接モニターしている感覚受容器は無く、直接血圧を調節する仕組みはありません。

 

 しかし、「血圧は大事じゃないんだ」と勘違いしないように注意しましょう。

 異常な高血圧は血管を痛め、時には血管壁を破ります。異常な低血圧は肝臓や腎臓などの低血流となり、栄養や酸素の不足による臓器機能低下を招いたり、細くなった脳動脈では脳梗塞の原因になることもあります。

 

 降圧剤の中には

 などいろいろあります。

 

 ここでは自律神経による血流量調節について説明します。

 もう数式計算はありません。

 あと一息です。

 

 

 


 

 ◆ 数式の堅牢性

 

 いくつか使えそうな数式が得られましたが、ここで数式の堅牢性(けんろうせい:robustness ロバストネス)について説明しておきます。

 

 硬く真っすぐな水道管を流れる水の層流についてのハーゲンポワズイユの数式は、血液がきちんと生理的な範囲内で流れているときに「似たような関係性」があるだろうと期待されて使われています。

 したがって、血管内の血液の動きが生理的な範囲を超えるようなときは、ハーゲンポワズイユの数式から大きく外れることになります。

 

 それに対して、気体の(また液体の)状態方程式は、血液のかなり幅広い状態の下で「似たような関係性」が成立すると考えられます。

 関係性としての堅牢性は、ハーゲン・ポワズイユの数式に由来すると弱く、状態方程式のみに由来すると強いと言えます。

 

 

 具体的には、血流量についての関係式「 Q = Qa r 2 」(血流量 = 血液量✕半径の2乗)は堅牢性が弱く、血圧についての次の関係式「P = Qa / V」(血圧 = 血液量/容積)は堅牢性が強いということです。

 ハーゲン・ポワズイユの数式に由来する関係式が成立しないような状況でも、状態方程式のみに由来する関係式は成立します。

 

 例えば、頚髄損傷で首から下の神経がすべてマヒしたようなとき、動脈の緊張性は失われて血圧が低下します。ハーゲン・ポワズイユの数式に由来する関係性で循環動態を理解するのは難しくなりますが、血圧についての関係式「P = Qa / V」(血圧 = 血液量/容積)は、そのような時でも使えます。

 

 関係式の堅牢性という視点から、これまでの計算を整理しておきます。

 

 

 

 

 

 

 


 

 ◆ 血圧の源

 

 ここで血圧というものが、どのようにして生み出されているのかを見ておきましょう。

 

 よくある勘違いは、「血圧は心臓が作り出している」というものです。

 完全なマチガイではありませんが、P = Qa / V という式からわかるように、血圧は動脈の容積 V と動脈系に存在する血液量 Qa とで作られています。

 その動脈の容積 V を決めるのが「心臓に近い中枢側にある太い血管の弾力性」と「末梢の細い血管の収縮によって作られる血管抵抗」です。

 心臓の働きは「動脈系に存在する血液の量 Qa を決めること」です。

 心臓が直接的に血圧形成に関与できるのは心筋の収縮期のみです。左心室から大量の血液を大動脈に押し出すときだけ心臓は血圧作りの一部を直接分担します。大動脈圧に逆らって血液を押し出さないといけないので、強く心筋を収縮させて大動脈圧よりも高い血圧を作らないといけません。

 その大動脈圧を作り出しているのは、大動脈内に存在する血液と大動脈壁の緊張状態です。

 心臓に与えられている重要な任務は「動脈系に必要な血液量を静脈系から移すこと」です。

 収縮期の血圧を高める任務などは持っていないといっても過言ではないでしょう。

 

 では、血管の容積と血管壁の弾力性が血圧を作る様子を紹介します。

 

 最初に、地球の地表で、室温、大気圧のもとで、とても硬いドラム缶(容積:1立方メートル)の中に空気を注入してみます。

 ドラム缶に穴を開けるだけで、大気は勝手に入っていきますが、ドラム缶の中の空気の重さは 1 kg となります。

 ドラム缶の中に空気を 2 kg 入れようとすると、ポンプで加圧して空気を注入していく必要があります。

 空気は容易に圧縮することができます。

 頑張れば自転車の空気入れを使ってもできることですが、空気 2 kg を注入できます。このときドラム缶内の空気の圧力は2気圧になっています。

 

 次は、空気ではなく水について同じようにやってみます。

 1気圧下では、水 1000 kg をドラム缶内に楽に入れることができます。

 しかし、水は空気のように圧縮することは難しい物体なので、普通の加圧で 1000 kg を超える水をドラム缶内に入れることは不可能です。

 (ここは、正確なところが分からないので適当に言わせていただきますが)ドラム缶内の水を、1 g 増やすだけで水圧は2気圧を超えるでしょう。

 

 

 では今度は、ものすごく柔らかくて無限に伸びるゴム風船に空気や水を入れてみましょう。このゴム風船に弾力性はありません。

 空気 2 kg を入れるとゴム風船は大きく伸び拡がり、容積が2倍になるので内部の気圧は1気圧のままです。

 水 2 kg についても同じようになります。

 

 

 血管は、「硬いドラム缶」と「ものすごくのびーるゴム風船」との中間です。そういう弾力性もあるゴム風船に空気や水を入れてみましょう。

 空気 2 kg を注入可能です。伸びたゴムが中の空気を絞めつけ圧迫するので、空気圧は1気圧よりも高くなります。空気は圧縮され 2 m3 よりも小さくなります。具体的な体積や圧力は、ゴムの弾力性によって決まります(次の表中には適当な数値を入れています)。

 水 2 kg も注入可能です。しかし、水は圧縮されないので、その分だけゴムを大きく伸ばすことになります。そのためゴムは空気のときよりもはるかに強く中の水を絞めつけ圧迫します。具体的な圧力はゴムの弾力性で決まりますが、空気を注入した時よりもはるかに大きな水圧がつくられることになります。

 

 

 では、動脈内で血圧の作られる様子を見てみましょう。

 動脈が血液で満たされても、動脈壁に緊張が無ければ、血圧は作られません。大気圧のままです。臓器の圧力も大気圧のまま。等圧なので血液は流れません。

 しかし、血管が緊張すると血圧が作られます。血管内の血液は絞り出されるようにして、圧力の低い臓器に向かって血液が流れます。

 太い動脈の緊張性は血管壁のゴムのような弾力性と血管平滑筋の収縮によって維持されています。細い動脈の緊張性は、主に血管平滑筋の収縮によって維持されています。

 

 

 

 

 大動脈などの太い動脈はゴムのような弾性繊維に富んでいます。血管を収縮させる筋肉(平滑筋)も持っていますが、大動脈を小さく絞る能力は大きくありません。

 若者の大動脈は、心臓から押し出された血液を受け取れるだけの柔軟性と、受け取った血液を弾力的な反発力で絞めつけ、絞り出すように末梢へ送る弾力性とを兼ね備えています。

 しかし、老化した大動脈は、血管壁に石灰化が生じることもあり、少しずつドラム缶のように硬い管に変化していきます。

 そのため、高齢者では脈圧(上の血圧と下の血圧との差)が大きくなっていきます。

 

 末梢の細い動脈では、血管を収縮する筋肉が発達しています。

 そのため、細い動脈の半径は数倍のスケールで小さくなったり大きくなったりできます。

 血管壁の筋肉が収縮し、動脈内腔径が小さくなったときは血流に対する抵抗がとても大きくなるので、細い動脈は「抵抗血管」と呼ばれることもあります。

 

 ここで、大動脈にある圧受容器の働きを見てみましょう。

 

 

 

 心臓(左心室)が1回に吐き出す血液量(心拍出量)が大きいと大動脈の脈動(太くなったり細くなったり)は大きくなります。

 

 

 圧受容器が本当にモニターしているのは大動脈の様子というよりは、「心臓の働き具合」のようです。

 

 

 血管の老化が進むと、大動脈壁に石灰化などがおこり、硬いドラム缶のようになります。圧受容器は仕事が無くなるということでしょう。

 ぜひネットで「大動脈の石灰化」を画像検索してみてください。

 参考:【CT画像あり】大動脈の石灰化とは?その原因・治療まとめ!(ちょっと医学メモ)

 参考:大動脈石灰化(神奈川県予防医学協会)

 

 血圧がどのように作り出されるのか、次のウェブページなどを御覧ください。

 参考:高血圧とは
 :▶ ▶ ▶
 の上の方だけで構いません。
 「かい内科クリニック」のウェブページ「高血圧」
 下の部分にもためになることがわかりやすく紹介されています。

 

 


 

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