S7◆ 交感神経による調節

 

 医者の不養生:一喜一憂しない血圧管理

 

 先に見たページに戻るときは、リンクを使うよりも、ブラウザの「(もどる、Back)」を使うと通信量を節約でき、また早く表示されます。

 

 


 

 S7◆ 交感神経による調節

 

 ではここで、交感神経が興奮した時に心臓や動脈に起こる反応を見ておきましょう。

 

 さて、トラに襲われるようなとき・・・眠気は吹き飛び・・・交感神経が興奮します。

 交感神経が興奮すると、戦いの準備が進みます(トラ相手だと逃げる準備です)。

 心臓では 心筋収縮力↑、心拍数↑となり、静脈系の血液を多量に動脈系へ汲み出す仕事が始まります。

 「胸がドキドキする」という状態です。

 動脈系の血液量が増える ので血圧は上昇します。

 しかし同時に動脈系の容積も増大するので、血圧がものすごく上がるというわけではありません。

 

 以下の図はイメージ図なので大袈裟に描いています。イメージ図では、細かい話は抜きにして、要点だけ乱暴に紹介します。

 

 

 交感神経が興奮する時、戦いに役立たない臓器への血流量は減ります。

 臓器の種類によって交感神経系の刺激に対する受容体の種類や数に違いがあります。

 皮膚などへ分布する動脈では動脈壁の平滑筋が緊張し、血管の径は縮小して(=血管抵抗が大きくなり)、血流量は激減します。

 骨格筋など、身体を動かすのに必要な臓器へ分布する動脈の血管壁は弛緩し(=血管抵抗が小さくなり)、血流量増大が可能になります。

 心臓の働きで血圧は上昇しつつありますから、血管抵抗の小さくなった骨格筋への血流量が増大します。

 脳へ分布する動脈は、交感神経の働きを強く受けません。動脈の径はほとんど変わらずほぼ一定ですが、血圧が上昇しつつあるので血流量は少し増えます。

 臓器の種類によって血管は収縮したり、弛緩したり、反応は異なりますが、全身の動脈系全体としては容積が大きくなり、心臓の働きで増えた動脈血液量の増加がそのまま血圧のとても大きな上昇につながるわけではありません。

 

 

 こちらの図の方がわかりやすいかもしれませんね。

 

 

 いろいろとメカニズムを掘り下げて理解するのがお好みの方のために、心臓や動脈の神経支配について、生理学の基本的な知識を羅列しておきます。一般の方には不慣れな物質名などがたくさん出てきますが、特に知らなくても先へ進めます。

 こういうのが苦手な方は、飛ばしても大丈夫でしょう。
 がんばらなくても大丈夫です:▶ ▶ ▶

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

受容体 重要な分布 好きな
カテコールアミン
効果
NA A
α1 血 管 +++ ++ 血管平滑筋 収縮
β1 心 筋
腎 臓
+++ ++ 収縮力↑
心拍数↑
レニン・アンギオテンシン系 亢進
β2 骨格筋の血管 ± ++ 血管平滑筋 弛緩
気管支 拡張
糖分解 促進

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 今さらながらとなりますが、「血管平滑筋の弛緩や収縮」と「血管の拡張や縮小」との違いについて説明しておきます。

 

 

 ふだん、多くの末梢血管の平滑筋は「ほどよい緊張状態」が保たれています。

 したがって、収縮する余裕もあるし、弛緩する余裕もある状態です。

 要するに、環境変化に対する順応要求に対して柔軟に対応できる状態を維持しているわけです。

 

 血管平滑筋が弛緩しても、そこに血液が補充されなければ、血管はフニャフニャ状態になります。

 そこにあるべき血液の無い状態、虚脱状態ですね。

 通常は、心臓が働いて静脈系の血液を動脈系に移したり、また臓器ごとに血管の径を大きくしたり小さくしたりして皮膚や消化器に分布していた血液を骨格筋に分布する血管に移したりすることで血液を補充します。

 血液が補充されてはじめて「血管拡張」と呼べる状態になります。

 

 血管平滑筋の収縮の場合は、そこにあった血液を追い出すことができてはじめて「血管縮小」と呼べる状態になります。

 

 普通の生理的状況下では、血管平滑筋の収縮と血管縮小は同時に起こり、血管平滑筋の弛緩と血管拡張は同時に起こるので、これらを混同して使用していることが多いです。

 

 

 以上を大雑把に整理すると先ほどの図になります(図を再掲します)。

 

 

 

 動脈の圧受容器が大動脈弓と頸動脈洞にあるということは何を意味しているのでしょうか?

 

 

 大動脈弓の圧受容器は、全身的な血流量調節用でしょう。

 それ以外の動脈圧受容器が頸動脈にのみ存在するということは、ヒトの循環器系がいかに脳血流量の維持を重視しているかを意味していると考えられます。

 

 

 襲い掛かっていたのは、ただの演技でした 😄

 

 


 

 ◆ 副交感神経による調節

 

 副交感神経の働きについて、ここではごく簡単にだけ紹介します。

 

 ひとことで言うと交換神経の逆です。休息時や食後に、活発に働くのは副交感神経です。

 心臓の働きは落ち着き、消化器官の働きは活発になります。

 

 強い痛みやストレス、顔を冷たい水で洗うことなどで、血圧が急激に低下して立ちくらみが起こったり意識を失うこともある「迷走神経反射」は知っておいたほうがよいでしょう。

 副交感神経は、心臓を止めるほどの強い働きを持っています。

 参考:「迷走神経反射」とは?症状・予防法・治療法も解説!【医師監修】:▶ ▶ ▶(2025.04.28、Medical Doc、武井智昭監修)

 

 


 

 ◆ 脳循環の脆弱性

 

 脳へ行く血流を調節する仕組みは、他の臓器へ行く血流を調節する仕組み(主に交感神経や副交感神経による調節)とは異なる独自性を持っているようです。

 脳へ行く血流量は、様々な循環状態において最優先に確保されています。

 脳は、ホモ・サピエンスを特徴づける最も重要な臓器なのでしょう。

 

 脳以外の臓器へ分布する動脈は、血管の半径を大きく変えることで必要な血流量を確保していますが、脳へ分布する動脈は、自律神経による血管半径の大きな変化を拒むことによって、脳への優先的な血流量を確保しているようにみえます。

 関係式を見てみましょう。脳以外の臓器へ分布する動脈は自律神経の強い支配を受けており、血管の径が大きく変化します。

 何らかの原因で血圧が大きく下がったときも、血管の径が大きくなれば血流量を維持できます。

 

 

 しかし、脳へ分布する動脈は半径を大きく変えることができないので、血圧の大きな低下が起こったとき、半径を大きくすることで血流量を維持するといった対応が十分にはできません。

 こうした脳循環の脆弱性は、血圧の異常な高値や低値が原因で起こる循環のトラブル(血管が破れたり、塞がったり)や臓器機能の急激な低下などが脳で起こりやすい原因のひとつとなっていると考えられます。

 低血圧による立ち眩み(たちくらみ)は、・・・そういうこと(異常な血圧変動に対する脆弱性)ですね。

 

 大事な特徴なので覚えておくとよいでしょう。

 

 

 要するに、脳ミソを「箱入り娘」にしちゃったら、環境変化にはめっぽう弱くなっちゃった、ということですね。

 

 


 

 先に見たページに戻るときは、リンクを使うよりも、ブラウザの「(もどる、Back)」を使うと通信量を節約でき、また早く表示されます。

 

 医者の不養生:一喜一憂しない血圧管理

 

 

pic.twitter.com/nMzMJWH5NK

— ocean (@hawsett4) April 25, 2025

 

pic.twitter.com/uoVwZeNy2f

— ocean (@hawsett4) April 23, 2025

 

pic.twitter.com/mYT1KX1y6f

— ocean (@hawsett4) April 26, 2025