医者の不養生:一喜一憂しない血圧管理
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S1◆ はじめに
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◆ 脈波 Pulse Wave
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◆ 降圧剤服薬中の方への注意
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S3◆ ハーゲン・ポワズイユの法則
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S4◆ 数式のバサ切り(1)
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S5◆ 数式のバサ切り(2)
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S6◆ 血流量 = 血液量 ✕ 血管半径 2
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S7◆ 交感神経による調節
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S8◆ 降圧薬服用開始時の血圧管理
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S9◆ おわりに
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◆ まとめ
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◆ 降圧剤服薬中の方への注意
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◆ 血圧計
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◆ 血圧計貸し出しセット
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◆ 外部リンク一覧
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S9◆ おわりに
◆ まとめ
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高血圧や低血圧は病的意味を持つ場合が少なくないので、「血圧が高めと指摘された」、「受診を勧められた」ようなときは 放置しないのがよい でしょう。
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血圧が乱高下しても、臓器に分布する動脈を大きく拡大したり、細く縮小したりして、臓器を流れる血流量を調節する仕組みがあります。
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ヒトの循環器系は、各臓器の必要とする酸素や栄養の供給量を保てるように発達してきました。
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ヒトの血管には、血圧を監視して一定の血圧を保つ仕組みはありません。
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他の多くの臓器に分布する動脈と比較して、脳に分布する動脈は半径の調節幅が狭いため、脳は血圧の異常な変動に最も弱い臓器となっています。脳は異常に高い血圧や異常に低い血圧によって機能が損なわれやすいです。
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ヒトの生理的な仕組みには、異常に高い血圧や異常に低い血圧に備えたものはありません。
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したがって、すこしでも健康な状態を保って長生きするためには、血圧計で血圧を測定し、異常に高い血圧や異常に低い血圧を避けるように適切な方法で調節する必要があります。
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高血圧に対する対処の 開始は早ければ早いほどよい でしょう。
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高血圧の対処方法には、いろいろな方法があります:
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無視しないで関心を持つ
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機会がある時は積極的に血圧を測る
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血圧を正しく測る方法を知る
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血圧計を用意する
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家族歴を調べる
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生活習慣を見直す
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肥満を解消する
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睡眠時間を確保する
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受診して医師による診断を得る(血管老化にともなう普通の高血圧なのかを確かめる)
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医師の指導を受けながらいろいろと試みる
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降圧剤の内服治療を受ける
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血圧測定に苦手意識を持つと「白衣性高血圧」といって、医療機関で測定すると血圧がものすごく高くなるクセがつきます。緊張感で交感神経系の活動が亢進すると考えられます。
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(高血圧になった多くの人々の希望では)薬に頼るのは最後の手段 ですが、生活様式の改善等で血圧が目標に到達できない時は、ギリギリになって薬を使い始めるよりは、早めに薬を使って血圧を下げたほうがよいでしょう。
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高血圧治療で最も大切なことは自分の血圧を正しく測定することです。
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肥満である、血糖値が高い、ストレスが大きい、寝不足である、腎機能が低下している、脳・心・血管系の既往歴や家族歴があるなど高血圧関連のリスクがある場合は、自分の血圧計を用意するのがよいでしょう。
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高血圧リスクの低い場合は、機会あるごとに血圧測定をして血圧の高くないことを確認しましょう。やっぱり少し高めかなということを確認できてから自分の血圧計を用意するのでよいでしょう。
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かかりつけ医が患者の服用する降圧剤の種類の変更や服用量の増減を考えるときには、「正しい方法で測定された安静時血圧の記録」がとても重要になります。
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血圧管理上のいろいろな判断は上腕で測定した血圧に基づいておこなわれるので、家庭や仕事場での測定も 上腕式血圧計 がお奨めですが、自分の生活スタイルによっては 手首式血圧計 が良い場合もあります。
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血圧計を持っていることではなく、実際に測定することが大事 なので、手軽に測定できるものを選んでよいでしょう。
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血圧計は種類も豊富です。急いで目についたものを購入する必要はありません。じっくりと調べて気にいったものを購入しましょう。
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血圧の測定は、大きく2つの方法を区別しましょう。
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方法1:様々な条件で測定する
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方法2:常に一定の条件で測定する(安静時に心臓の高さで測る「いわゆる正しい血圧測定」)
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方法1で血圧を測定した時は、測定条件:日時、状況、上腕式か手首式か、右腕か左腕か、カフ(マンシェット、駆血帯)の高さ、測定結果:上の血圧/下の血圧、脈拍数など、あとで見てわかるように記録しましょう。
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方法1の目的のひとつは、測定条件の違いで血圧測定結果が大きく異なること(10~20 mmHg 高くなったり、低くなったりする)を学び、方法2で正しく血圧を測定することの重要性を理解することです。
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血圧は刻々と変化しています。あとで、どのような状況で測定したのかが分かるように「食事終了時」、「排便直後」、「30分の散歩後」、「激しい運動時」、「強い怒りを感じたあと」、「寝る前」など身体的な状況を記録しましょう。
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特に重要なのはカフ(マンシェット、駆血帯)の高さです。心臓の高さより高くしたり、低くしたりして血圧を測ってみましょう。
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右腕と左腕で測定して比較してみましょう。
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同じ部位での血圧連続測定は3回以内に留めるのがよいでしょう。
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方法1の目的のひとつは、急激な血圧上昇の原因を把握し、そのようなことを避けるように注意できるようになることです。
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頭に余裕があれば、「脈圧」と「平均血圧」を計算して記録しましょう。
脈圧 =【上の血圧】ー【下の血圧】
平均血圧 =【下の血圧】+【脈圧の3分の1】
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様々な条件下での血圧はメモとして記録しましょう。(方法2「一定の条件で測定する降圧薬コントロールのための血圧測定」とは別の記録としましょう)
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方法2の 診断や血圧管理のための血圧測定 は、比較できるように 毎日同じ条件で測定 しましょう。
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一般的には、朝の起床後、排尿などを終えて座り、少し落ち着いた時が推奨されています。
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昼(昼食前)、夕(食事前)、夜(夕食前や就眠の少し前)の安静時も測定の候補時間です。
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1日の中でどの時間帯の血圧が高いかは個人差があります。朝と最も高い時間帯の血圧は、毎日の記録の候補です。
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上腕式血圧計でも、手首式血圧計でも、血圧計のマンシェット(カフ、駆血帯:上腕や手首に巻きつける部分)の高さは、必ず自分の 心臓と同じ高さ にしましょう。
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カフを巻きつけた腕を上げた状態と下げた状態とでは、血圧測定結果が「10 ~ 20 mmHg以上」異なってきます。
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動作直後で息の荒いとき、食事のあと、入浴のあと、排便のあとなど血圧の不安定な時間帯は避けましょう。どのような条件で血圧が大きく動くかは「方法1」で学習します。
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毎日の定期的な血圧測定の場合、血圧測定は1回で十分 です。「いつもより高い(あるいは低い)結果」が出ても、測り直す必要はありません。しっかりと条件(安静時、心臓の高さなど)を整えてから1回目の血圧を測定するようにしましょう。
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高血圧の診断や血圧管理(降圧剤のコントロールを含む)に使うかもしれない血圧は 血圧手帳などに記録 しましょう。(測定の時間帯、右か左か、上腕か手首か、上の血圧・下の血圧・脈拍数などがわかるように記録しましょう)
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もちろん、降圧剤の内服が始まっておらず、運動療法や食事療法で血圧のコントロールを試みている時も、方法2の安静時血圧が評価の基準です。
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目標血圧の範囲や降圧剤服用の必要性は「かかりつけ医」に確認しましょう。
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医学的な判断にとって、「正しい方法で測定された血圧の記録」はとても重要です。
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目標血圧の範囲はひとりひとり異なります。年齢、既往歴や家族歴、血圧に関係する疾患等(肥満、糖尿病、心機能、肝機能、腎機能など)、生活スタイル、睡眠時間、職業環境など様々なことを考慮して目標血圧の範囲を決めましょう。
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血管が破れやすく「出血のリスクが大きいのか」、血管が詰まりやすく「梗塞(閉塞)のリスクが大きいのか」、その両方のリスクが大きいのか、かかりつけ医に確認しましょう。
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一般的に、出血リスクの大きいときは目標血圧を少し低めに設定し、梗塞のリスクの大きいときは少し高めに設定します。
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患者によって、かなり複雑な背景条件があるため目標血圧の範囲が簡単に決まらないことは少なくありません。片麻痺がある、腎臓機能が著しく低下しているなどのため目標設定の難しいこともあります。高齢者になると、何かを良くしようとすると、別の何かが悪くなるといった状態であることも少なくありません。実際の血圧と体調との関係でバランスの良し悪しを見ていくことになりますが、ここでも「正しい方法で測定された血圧の記録」が重要になります。
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一般的に、上の血圧は低ければ低いほど血管系のマズい出来事の発生が少ないとされています。
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しかし高齢者の場合、下の血圧は少し高めになるほうが臓器の循環状態が良く、元気だとされています。
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医師により考え方は少しずつ異なりますので、目標血圧の設定や変更などは必ずかかりつけ医に相談しましょう。
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降圧薬の服用を始めたときは、血圧手帳に降圧剤の服用(種類・量・服用時刻:朝昼夕)も記録しましょう。
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降圧剤の服用を開始したり、種類や服用方法を変更すると、元気がなくなる、食欲が落ちる、動悸を感じる(ドキドキする)など種々の副作用の出ることがあります。体調の変化も血圧手帳に記録しましょう。
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ゆっくりと進んだ高血圧の場合、血管閉塞(梗塞)のリスクが小さい場合でも、初めての降圧はゆっくりと進めるのが安全です。
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急激に進んだ高血圧の場合や動脈瘤の存在が疑われる場合などは、降圧を急ぐ必要のある場合があります。
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毎日の血圧測定と記録が面倒になったときでも、生活環境の大きな変化や内服薬の変更などがあるときは、その前後できちんと測定・記録をおこないましょう。
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血圧が管理目標の範囲内で安定してくると、毎日の測定や記録は面倒になってきます。
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ふだんは時々測り、何かある時は、その出来事の内容に応じて血圧の測定と記録を必要な期間続けるのがよいでしょう。
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内服薬の変更(種類の変更や服用量の増減)の場合は、少なくとも「変更前1週間・変更後数週間以上の血圧測定・記録」をおこなうのがよいでしょう。
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かかりつけ医がまだいないという方は、とりあえず血圧の勉強をしておきましょう。
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いろいろと知識を身につけておくと、自分のことをしっかりと診てくれる医師を探すときに役立つでしょう。
◆ 降圧剤服薬中の方への注意
本説明の対象は「老化にともないゆっくりと高血圧になり、そろそろ服薬治療も必要かなと考え始めている中高年(血圧測定初心者)」の方です。
すでに高血圧の内服治療を受けている方にも役立つ内容ではありますが、いろいろと本やネットなどで調べて「降圧剤を服用しているのに、自分の血圧は高すぎるのではないか(あるいは低すぎるのではないか)」と感じても、かかりつけ医に相談しないで「勝手に服薬量を増やしたり(減らしたり)」しないように留意してください。
かかりつけ医は、患者の人種、性別、年齢、体格(肥満度)、性格、認知能力、正しい方法で測定された血圧の記録、患者の既往歴や家族歴、血圧に関係する疾患等(肥満、糖尿病、肝機能、腎機能など)、心電図や胸部レントゲン、頸動脈エコーなどの検査結果、生活環境、職業環境、薬の管理能力など多くの様々なことを考慮して薬の種類と服薬量を決めています。2種類以上の薬をうまく組み合わせて使っている場合もあります。
管理目標とする血圧の範囲はひとりひとり異なりますし、医師によっても多様な考え方があります。通常は、かかりつけ医による目標血圧が基準となります。
◆ 血圧計
私は腕が弱いので、日本精密測器(株、NISSEI)の加圧式血圧計(カフの圧を高めながら血圧を測定するので腕にやさしい)を使っています。
キューッツと強く絞めつけられるのは痛くてイヤだという人にはおススメです。
腕周りが太い場合、特別に大きなカフ(マンシェット、駆血帯)が必要になることがあります。
「マイ血圧計」を用意する場合は、長く使う機器なのでしっかりと研究しましょう。
AIお奨めリスト:↓
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日本精密測器(株、NISSEI)
▶ ▶ ▶
(記号のJ:日本製ですが、外国製も同じ品質管理を受けています)
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オムロンヘルスケア(株、omron)
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タニタ(株、TANITA)
▶ ▶ ▶
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エー・アンド・デイ(株、AND)
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◆ 血圧計貸し出しセット
血圧測定初心者に1週間貸し出すためのセット(上腕式 DS-A10 、手首式 WS-10J)を準備中です。
血圧計取扱説明書
:▶ ▶ ▶
血圧測定案内書
:▶ ▶ ▶
◆ 外部リンク一覧(掲載順)
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【S1】血圧受容器って何? 血圧調節の隠れた主役を分かりやすく解説(2025.02.13、NIMO-Media.):
▶ ▶ ▶
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【脈波】PWV(脈波伝播速度)/ABI(足関節上腕動脈血圧比)とは:
▶ ▶ ▶(2019.06.21、田無循環器クリニック)
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【脈波】高田晴子先生の血管老化度をみる血管年齢は、健康指標です。:
▶ ▶ ▶(血管年.COM)
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【脈波】血管機能検査―CAVI,PWV,ABI:
▶ ▶ ▶(2013、日本内科学会雑誌)
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【S3】【ハーゲン・ポアズイユの式】を解説:層流の圧力損失計算式(2021.02.18、化学工学レビュワー 化学工学系の情報発信ブログ):
▶ ▶ ▶
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【S3】ハーゲン・ポアズイユ流れとは?|理論と導出【流体力学】(2023.01.03、高校物理からはじめる工学部の物理学):▶ ▶ ▶
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【S3】ポアズイユの法則と血流【物理オリンピック】(2021.03.22、予備校のノリで学ぶ「大学の数学・物理」):▶ ▶ ▶
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【S5】ファンデルワールス力と状態方程式(理系ラボ 東大塾長 山田和樹):
▶ ▶ ▶
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【S6】【CT画像あり】大動脈の石灰化とは?その原因・治療まとめ!:
▶ ▶ ▶
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【S6】大動脈石灰化(神奈川県予防医学協会):
▶ ▶ ▶
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【S6】高血圧とは(かい内科クリニック):
▶ ▶ ▶
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【S7】「迷走神経反射」とは?症状・予防法・治療法も解説!【医師監修】:
▶ ▶ ▶(2025.04.28、Medical Doc、武井智昭監修)
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【S8】「高血圧予防には塩分制限と思う人が知らない真実」(東洋経済 ONLINE、2025.01.17、浜谷陸太):
▶ ▶ ▶
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【S8】血圧計の種類と仕組みは?上腕をなぜ締め付けるのか(健康生活 No.1):
▶ ▶ ▶
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【S8】血圧計の二つの測定方式の仕組みについて(医療機器情報ナビ):
▶ ▶ ▶
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【S8】血圧測定時、予測される収縮期より30mmHgくらい加圧して測定するのはなぜ?(看護roo!):
▶ ▶ ▶
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【S8】脈圧( 血圧の上と下の差)が大きいのは危険です(2019.08.16、しもやま内科):
▶ ▶ ▶
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【S8】【循環管理レベルアップ】平均血圧,脈圧をみる【収縮期/拡張期血圧との違い】(2022.11.25、循環器Drぷーのコソ勉る〜む):
▶ ▶ ▶
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【S8】日本高血圧学会:
▶ ▶ ▶
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【S8】高血圧治療ガイドライン(PDF:JSH2019:9MB):
▶ ▶ ▶
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医者の不養生:一喜一憂しない血圧管理
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S1◆ はじめに
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◆ 脈波 Pulse Wave
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S3◆ ハーゲン・ポワズイユの法則
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S4◆ 数式のバサ切り(1)
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S5◆ 数式のバサ切り(2)
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S6◆ 血流量 = 血液量 ✕ 血管半径 2
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S7◆ 交感神経による調節
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S8◆ 降圧薬服用開始時の血圧管理
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S9◆ おわりに
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◆ まとめ
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◆ 降圧剤服薬中の方への注意
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◆ 血圧計
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◆ 血圧計貸し出しセット
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◆ 外部リンク一覧
終わりなので、夕方の海を眺めてみましょう。
もっと詳しく知りたくなった方は「S3 ~ S8」にもチャレンジしてみてください。